東京で気ままに生きる

誰よりも東京が好き。そんな筆者が東京での暮らし(食、住、仕事、育児、お金、趣味)について徒然と語ります。

覚せい剤で捕まった経産省キャリア官僚の働き方について思うこと

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東京では、少しずつ涼しくなり過ごしやすくなってきましたが、皆さんお元気に過ごせていますでしょうか?

 

毎日、仕事に、家事に、子育てにと慌ただしく過ごしていると、本当に時間があっという間に過ぎていきます。そうした中で、隙間時間にネットで話題になる記事やニュースをチェックするのが楽しみなのですが、今年5月にニュースとして大きく取り上げられた経産省キャリアの覚せい剤使用に関する事件の裁判傍聴記事を読みました。

 

普段なら記事を読んでも次から次とすぐに別の情報を求めてしまうのですが、読んでいて組織の一員として働くことについて思うことがあったので、今日はそのことについて書いてみたいと思います。

 

 

覚せい剤で捕まった経産省キャリア官僚

 

今年5月に大きく話題になった経産省のキャリア官僚が覚せい剤で捕まった事件を皆さんまだ覚えていますでしょうか。

 

経産省の若手のキャリア官僚(28歳)が、自宅マンションで、覚醒剤が入っていると知りながら国際スピード郵便を受け取ったとして、麻薬特例法違反(規制薬物としての所持)容疑で現行犯逮捕された事件です。

 

経産省キャリア、省内で覚醒剤使用か 注射器を押収:朝日新聞デジタル

 

逮捕された容疑者が勤務していた経産省の職場から覚せい剤を使用したと見られる注射器が見つかったり、また、輸入したとされる覚せい剤の量の多さから麻薬の売人だったのではないかという疑惑が出たり、大きく報じられていたのが記憶に残っています。

 

逮捕後、既に3ヶ月が経過しこうした事件があったことをすっかり忘れていたのですが、裁判が既に始まっていたのですね。

 

裁判ウォッチャーの阿曽山大噴火さんが、詳細に裁判傍聴記事(「覚せい剤を使ってでも仕事に行かなければ」麻薬で逮捕された経産省キャリア官僚の悲壮な叫び )を書かれています。

 

読み進めていると、事件を起こした経産省のキャリア官僚がいかに長時間労働が当たり前の過酷な労働環境にいたのかや、責任感の強さがゆえに潰れてしまったことが手に取るように分かって、なんとも胸を締め付けられました。

 

長時間労働が当たり前の過酷な労働環境

 

裁判傍聴記事を読んで初めて知りましたが、逮捕された経産省のキャリア官僚は、うつ病だったようです↙︎

 

被告人質問です。まずは弁護人から。なぜ覚せい剤を使用するようになったのかを聞かれ、「数年前からうつ病になって通勤が困難でした」と。「でも仕事を続けたいと思っていて、より効果の強い薬を求めてしまったから」だと。被告人にとっては覚せい剤を抗うつ剤みたいな感覚で使っていたようです。

うつ病になったきっかけについては「労働環境が過酷でした」と話しています。平成25年に経済産業省資源エネルギー庁勤務、平成27年に本省の自動車課に異動。この頃「この仕事を本当に好きでやっているのか」と悩んでいたようです。エネルギー庁での残業時間を聞かれると「平均で月150時間。多い時は300時間でした。1週間泊まり込みもありました」と。  

 

月150時間の残業時間とは、単純に月の労働時間を月20日(週5日×4週)と仮定すると、1日約7.5時間も残業していることになります。7.5時間の勤務ではなくて、通常の勤務時間に加えて7.5時間の残業時間ですから、いかに長時間労働をしていたかがよく分かります。おそらく毎日終電+休日出勤というのは当たり前(終電で帰れたらむしろマシ)という毎日だったのではないでしょうか。

 

うつ病を発症した要因については、労働環境が改善し、心の余裕が生まれたためだそうです。

 

被告人が自動車課に異動になると労働環境は改善されたらしく「多くても残業100時間程度に減りました!」と。しかし、その年の冬に医者からうつ病だと診断されました。エネルギー庁の時は緊張感で耐えられていたけど、残業時間が減った事で心の余裕が生まれうつ病になったと診断されたそうです。

 

それでも、100時間の労働時間は、1ヶ月働くだけで労災認定の過労死ラインを超える働き方です。

 

長時間労働 ➡︎ うつ病発症 ➡︎ 覚せい剤の使用、という因果関係の流れが真っ直ぐで、もちろん覚せい剤に手を出した責任は本人にありますが、本当に過酷な労働環境だったのだと思います。

 

責任感の強さがゆえに潰れる

  

逮捕された経産省のキャリア官僚は、非常に責任感の強い人だったのだと思います。

 

(覚せい剤に)なぜ、手を出したのかと聞かれると「酷いうつの中で、これ以上迷惑をかけられない。仕事に行きたいという気持ちが判断を狂わせてしまいました」と。「次に体調を崩したら長期休暇を取るしかないと思っていて、違う課に異動にすると言われていましたが自動車課でどうしても働き続けたいと思い、とにかく(仕事に)行かなければという思いでした」と。このような精神状態の中で違法薬物を使ったそうです。

 

仕事に行くために覚せい剤を打つなんて、まったく理解ができません。

 

けれども、周りの人に迷惑をかけられない、自分が仕事に行かなければいけない、という気持ちは痛いほど分かります。

 

特に組織で周りの人とうまく仕事をしなければならない組織人としては、誰しも多かれ少なかれこうした気持ちは共有できるものだと思います。

 

お給料をいただいている以上、周りの期待に答え、手がける仕事は責任を持って最後までやり通すというのも社会人として基本的な考えです。

 

けれども、私は個人の健康を犠牲にしてまで、やらなければいけない仕事はないとも考えています。

 

個人として能力を発揮し、組織として継続的に最大のパフォーマンスを出すためにも、働きやすい環境を整えるのは、個人ではなく組織や会社側の責任です。周りの人の期待と個人の健康を天秤にかけた場合に、個人の健康の方が価値が高いのは明らかです(だって、周りの人は私自身のことを守ってくれるわけではないから。)。

 

責任感と組織や会社の一員として働くということ

 

仕事は尊いものです。働くことは社会に貢献することでもあります。また、組織や会社の力を借りると、個人でやるよりも大きな仕事に携わるチャンスが増えます。組織や会社に所属することで、自分自身がその看板を盾に、社会から認められている、居場所が見つかったという安心感を感じることもあります。

 

けれども、組織や会社における個人とは、悲しい事実ではありますが、代替可能なものです。私が入る前からそこにあり、私が辞めた後もそこに残るのが組織や会社というものです。

 

これは、どんなに優秀で、あの人の替えはいないと周りから高く評価されている人にも当てはまる事実だと思います。いわんや、会社一のスーパースターではない、私の代わりとなる人材はごまんと居るはずです。

 

かつて私が指導していただいた、50代の会社役員の人にお酒の席でこんなことを言われました。

 

「俺はこの会社で30年ぐらい働いて、自分がいないと会社が倒れると思って全力で働いてきた。娘が3人いて、小、中、高、大学と、どの娘の入学式にも卒業式にも1回も出ないで仕事ばかりして来た。定年近くのこの歳になって分かった。俺がいなくても会社はなんとかなると。」

 

その人は仕事が大好きな人だったので、冗談っぽく「ガッハッハ」と笑いながらこの話をしていましたが、私はすごい真実を突いた話だと思って聞いていました。

 

 

責任感を持って仕事をするのは大切だけど、個人を犠牲にしてまで働く必要はないよ、というお話でした。だからやっぱり東京が好き。今日はこの辺で。

 

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