東京で気ままに生きる

誰よりも東京が好き。そんな筆者が東京での暮らし(食、住、仕事、育児、お金、趣味)について徒然と語ります。

メルケル独首相の米ハーバード大学演説を聞いてみた。“everything is possible ”

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皆さん、卒業式の演説って好きですか?

 

いきなり何だと思われるかも知れませんが、私は卒業式の演説が映画やドラマ、ドキュメンタリーと並ぶ一種のエンターテイメントとして、すごく好きです。

 

だってそこには、魅力的なドラマと学びがあるから。第一線で活躍する著名人が自分の人生で得た学びを、ひとりの人生の先輩としてこれから社会に飛び立とうとする若者に率直にアドバイスする、魅力的なストーリーがそこにはあります。

 

特に欧米の有名大学の卒業式演説は、超一流ゲストによる感動的なものが多くあります。例えば、米Appleの創業者である故スティーブ・ジョブズ氏が、スタンフォード大学で行なった2005年の卒業式の演説は非常に有名ですよね(その一節の“connecting the dots”という言葉を聞いたことがある人も多いはず)。

 

最近、メルケル独首相が米ハーバード大学の卒業式で演説を行ったということがニュースになっていたので、英語の勉強も兼ねて、今日はその演説について書いてみたいと思います。

 

 

メルケル独首相の米ハーバード大学演説 

ドイツのメルケル首相は5月30日に、米ハーバード大学の卒業式で演説したということがニュースになっていました↙︎

 

 

見出しを見るだけでも、米トランプ大統領批判の演説だったことがよく分かります。実際に冒頭のBloombergの記事を引用してみます↙︎

 

 演説はトランプ米大統領の名前に一言も触れずに、同氏と米政権を痛烈に批判する内容だった。

メルケル氏は通商や移民、気候変動に至るまで、トランプ氏と衝突した政策を列挙。首相が誰について話しているのか、聴衆は明確に理解した。

 旧東ドイツで育ったメルケル氏は自身の経験を語り、「無知と偏狭の壁を打ち破りましょう」と呼び掛けると、聴衆は起立して応じた。「壁」への言及が、2016年の米選挙運動でトランプ氏が連呼した反移民の主張を思い起こさせたのは明らかだった。メルケル氏はさらに、「うそが真実で、真実がうそに」すり替えられる世界で、市民生活がいかに損なわれるか警告し、「思いつき」で行動する前に立ち止まってよく考えた方がいいだろうと発言。聴衆の声援と笑いを誘った。

 ドイツ外務省で対米関係を統括するペーター・ベイヤー氏は、メルケル首相が講演で示唆したのはトランプ大統領のことだと確認した。

 

トランプ大統領を意識した演説であることは間違いないようです。けれども、卒業式演説という性格を思うと、トランプ批判の内容にとどまらない卒業生向けのメッセージが何かあったはず。卒業式演説が好きな自分としては、そこの部分をぜひ聞いてみたいのです。

 

記事はあくまでも2次情報のため、1次情報である演説そのものを早速聞いてみましょう。

 

演説の動画と個人的な感想

動画はこちらから

 

※全体約35分間。冒頭と最後は英語ですが、途中はドイツ語→英語の逐次通訳です。

 

個人的な感想

 

これは、非常に勇気付けられる、素晴らしい演説ですね! 

 

演説は、冒頭、首相自身が24歳の卒業式の時に感銘を受けたヘルマン・ヘッセの次の言葉を紹介するところから始まります。

 

あらゆる物事の最初には、不思議な力が私たちを守ってくれて、生きる手助けしてくれる(In all beginnings dwell magic force for guarding us and helping us to live)

 

これから新たな道へ進む卒業生を勇気付ける、非常にポジティブな雰囲気を作ろうとしているのがよく分かります。その上で、かつての東ドイツ市民として家族がベルリンの壁によって分断されてしまった経験や、その決して変わる事はないと思えた壁が、人々の行動によって崩壊するのを目の当たりにした経験を元に、メルケル首相は次のように述べています。

 

何事も変更がきかず変えられないように思えたとしても、実際に変えることは可能である」(anything that seems to be set in stone or alterable can indeed change)

 

この言葉はとても力強く、演説を聞いていてとても印象に残りました。そしてこれが、演説全体を貫くキーメッセージである「何事もやれば出来る(everything is possible) に繋がっていきます。

 

演説の中では、確かにトランプ大統領を意識せざるを得ないような、貿易摩擦、移民問題、気候変動問題、多国間主義、即断即決でなく熟慮の上での判断といった話が出てくるのですが、演説の全体のメッセージは、一貫して、「何事もやれば出来る」という非常に前向きな、卒業生を鼓舞するようなトーンになっています。

 

逐次通訳だとたまに聞きづらいこともあるのですが、英語の通訳の方が短めにテンポよく通訳してくれています。35分という長さなのですが、聞かせる内容で長さを感じさせない素晴らしい演説だと思いました。

 

メルケル演説の6つのポイント (takeaway)

お時間のある方は、ぜひ演説そのものの動画を見ていただきたいと思いますが、そんな時間ないよという人のために、メルケル首相が演説で語った6つのポイントをまとめておきます。(出典:ドイツ首相府HP “Bundeskanzlerin | Chancellor's speech at Harvard”より)↙︎

 

<6つのポイント(takeaway)>

 

  • 無知や偏狭な心の壁を壊そう。変わらないものはないのだから(Pull down the walls of ignorance and narrow-mindedness, because nothing has to stay as it is)

 

  • 共に行動しよう。多国間のグローバルな世界の利益のために(Act together – in the interests of a multilateral, global world)

 

  • 自分自身に、正しいからこれをやっているのか、それとも単に可能だからやっているのかを問い続けよう。(Keep asking yourself - Am I doing this because it is right or only because it is possible?)

 

  • 自由は決して当たり前のものではない、という事を忘れないで(Don’t forget, freedom can never be taken for granted)

 

  • 自分にとって何が可能になるかで自分自身を驚かせよう(Surprise yourself with what is possible)

 

  • 何かを開くことは常にリスクを意味するということを覚えておこう。新しい何かを始めるためには、古いものをどこかへやらないといけない。とりわけ、当たり前のものは何一つなく、何事も可能なのだから。(Remember, openness always means risks. To begin something new you need to let go of the old. And most of all, nothing should be taken for granted, everything is possible)

 

とてもポジディブな演説だったということが多少は伝わりますでしょうか。

 

メルケル独首相の米ハーバード大学演説を聞いてみたよ、報道だとトランプ大統領批判の演説としか報道されていないけど、「何事もやれば出来る」(everything is possible )の重要性を説くポジディブな素晴らしい演説だったよ、というお話でした。だからやっぱり東京が好き。今日はこの辺で。 

 

関連記事です。英語をマスターするためには、とにかく発音が重要というお話です↙︎

 

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